業務委託契約と雇用契約の違い

保険・労働・雇用

社労士Tです。

 

前回の投稿でも触れましたが、今回は美容業界特有の「請負(業務委託)」による働き方について取り上げていきたいと思います。美容業界でも、雇用契約を結ぶ形態が主流ではありますが、最近ではシェアサロンはもちろん、面貸しや業務委託で働く方(自営業形態)もずいぶんと多くなった印象を受けています。

前回の記事である、「働き方改革」についてもそうですが、どんな働き方を選ぶかで、”労働基準法”などはもちろん、法律(保険)が適用される人されない人がいます。その方が”労働者”なのか、”下請け”なのか。働く本人も会社も、違いを理解しておくほうがよい位、さまざまな働き方が存在する世の中になってきています。

 

世の働き方は、概ね以下の3つです。

 

  • 雇用(正社員、パート、アルバイト、契約社員など、自社が雇用する労働者
  • 派遣(派遣会社と雇用契約を結んでいる労働者を自社で使用する)
  • 請負(自社の仕事を別会社に委託する契約。相手方は労働者ではない
    ※フリーランスと呼ばれる方々も請負に含まれる

 

会社員の9割は上の1番目の「雇用」に該当しますので、美容業界で請負契約が増えてきていることは、他の産業と比べても特徴的であると感じます。仮に普通のサラリーマンが、シェアサロンのようにオフィスを間借りして自由に働き、稼ぐなんてことはそうそう簡単にはできませんから、まさに「手に職」ならでは!という印象です。

 

 

ちなみにこの請負の方々。「労働者」ではありませんので、さまざまな法律の適用から外れることとなってくることをご存知でしょうか。

 

社長:T先生、業務委託の美容師なら残業代や有給休暇は不要と聞いたので委託契約にしました。問題ないですよね?

 

社労士T:社長さんの認識で問題ありませんよ。業務委託なので、労働基準法や各種保険に加入する必要もありません。念のため確認ですが、お客さんの予約があるときだけ来てもらうようなスタイリストさんというイメージですよね?

 

社長:いいえ。10~19時までの勤務で、月6休で考えています。実はまだアシスタントなので、勤務後には練習をしてもらって、一刻も早くデビューしてくれ。と伝えているんですよ。先生、お給料はどう設定すればよいでしょう?アシスタントのうちは時間給でいいでしょうか?

 

「請負契約=事業主のいろいろな義務がない」のは事実です。残業代だって、有休だって、保険加入だって不要です。でも、具体的な指示・命令もできないのが請負関係です。相手方は労働者ではなく、いわば「別会社の人」ですから、よその会社の人に何時に出社しなさい!こうしなさい!などと命令できるはずがない、と考えればわかりやすいことと思います。

 

しかし、まだまだ請負契約さえ結べばOK!!とお考えの方も多いようで、顧問先のサロンオーナーとこのようなやりとりをすることがずいぶん増えています。おそらく、請負にすることでいろいろな義務が生じないことをメリットと感じて取り入れている方もいるのだと推察します。

 

そもそも、「請負の正しい働き方」というのはどういうものなのでしょうか。

 

以下の例に該当するような場合、たとえ名前は”請負契約”でも実質的には雇用契約とみられ、事業主がいろいろな責任を負うこととなります。便利なインターネットのおかげで労働者もいろいろ知識を得られる時代です。従業員に役所に駆け込まれ、あとから痛い目を見ることのないよう気をつけましょう。

 

<請負関係ではない例>
・依頼、指示に対する拒む自由がない
・指揮監督の程度が高い
・勤務場所・出退勤時間の拘束がある(予約が途切れても定時まで帰れない)
・労働に応じた報酬の意味を持つ(時間給、日給などとしている)
・設備や美材が会社負担で用意されている(経費負担がない)
・報酬額が一般従業員と同等である(報酬が給与水準と同じ)
・専属である(ほかで働く自由がない)
・就業規則、服務規程の適用がある(各種会社ルールに従っている)
・給与所得として源泉徴収されている
・退職金制度、福利厚生の適用を受けることができる

 

いかがでしょうか。

先ほどの社長の言っている、「6休、10~19時勤務のアシスタントの請負契約」というのは、もはや名ばかり請負契約で、実態は雇用契約であるということがお分かりいただけると思います。加えて、そもそもアシスタント職というものは先輩の指揮命令なしで機能しないであろう仕事ですので、請負契約でやろうとするとなかなか無理がありますよね。もしも本気で請負契約でやりたいなら、シャンプー1回いくら、ワインディング30本まででいくら、など、仕事量に対し報酬を決めることをお勧めしますが、いろいろ指示をして動いてもらうことが予想ができるアシスタント職であれば、請負契約とするのは根本的に無理があると言えるでしょう。

 

最近役所などでも、実態が雇用契約の労働者への対策(保護)に力を入れています。

 

面貸し、業務委託、シェアサロン等、請負関係の働き方も多い美容業界でも、例に挙げた社長のように、実態が労働者であることが何かの拍子で発覚し、残業代や社会保険など、さかのぼっていろいろと適用することが命じられることもあるということなのです。(相手が役所ならまだいい方です)

 

請負問題だけでなく、労務トラブルを弁護士さんに相談されてしまうと、金銭的にもかなりの解決費用がかかります。機会があればまたご紹介しますが、ある美容室の軽めのパワハラ事案でも、被害者側弁護士さんが介入した途端、数百万の解決金が動きました。未払い残業代請求の案件でも、一人百万単位で請求が来ることは何ら珍しくなく、TVCMなどでもおなじみとなった「弁護士相談」も、ハードルが下がりすぎるのは困ったものだなぁ、、と頭を抱えてしまうことも多いです。

 

といっても、私も決してみなさんの不安をあおりたいわけではなく、正しい情報を、正しく理解すること。無理な適用はしないこと。それらが皆さんの会社を守り、従業員を守ることにつながる。ということをお伝えしたいのです。

 

美容業界で広がる「請負契約」の自由な働き方は、時代にも合いますし、美容師の仕事との相性もいい契約方法だと思います。だからこそ、会社側も請負の美容師の扱いをきちんと理解しておくことが、今後ますます求められることは言うまでもありません。少なくとも、

 

・雇用契約書ではなく、業務委託契約書を交わす

・報酬は時間や日単位ではなく、売上や成果に対する歩合などとする

・タイムカードなどで遅刻や早退、欠勤などの管理はせず、具体的な出退勤の指示もしない

・業務命令は原則しない

・カラー剤やパーマ液などの経費は自分持ち(が望ましい

 

このあたりを雇用契約の社員さんと分けて取り決め、運用をされておくと、社員と請負の違いもはっきりしてわかりやすい運用ができるのではないかと考えます。結果として、

 

  • 【 社員 】は会社責任。安定。定期昇給や賞与、保険などの福利厚生面での充実
  • 【 請負は自己責任。自営業者。自分の生活を優先しながら、自身の都合で自由に働ける

 

このような差別化ができることとなります。

どちらがいい、悪いではなく、柔軟に相互が良い方法を話し合って決めていく。というのが理想の姿ではありますが、労働者がどんどん減る時代に入る中、会社も雇用契約だけにこだわらず、さまざまな働き方、契約方法も視野にいれることも、事業拡大の可能性が広がることにつながるのではないかと考えています。

 

次回は、”労働者”に適用される保険(まずは労働保険から)のお話をしていく予定です。

 

※FBのグループ内の質問がまだあまりでていませんが、なんでも遠慮なく聞いてくださいね!!私も皆さんと同じ美容師ですから、お力になれることは多いはずです。

 

それでは!